犯人側の人生背景にも大きくスポットが当てられており、町の零細工場の経営に失敗した男・過激派崩れ・集団就職で都会に来た沖縄出身の青年が何故犯行に至ったのか、日本の高度経済成長時代への批判を暗示しつつ明らかにされて行く!
犯人側にもドラマを与え感情移入を狙った演出も相俟って、単なるパニックムービーとして括れない!
スカパー!で放送してた『新幹線大爆破』を観た。
かなりのオールスター映画なんだが、当時はあんまり受けなかったそうな。
で
素直に観た感想
1.どちらかと言えば群像劇
一応主役は高倉健さんなんだけど、ダブル主役的に宇津井健が国鉄職員役で出てる。
それと本当はもっと出番多かった筈(?)の千葉真一が「映画スター」的に目立つ。
でも鈴木瑞穂やら『仮面ライダー』の滝やら、『ウルトラマン』のハヤタとか、女医(?)役の藤田弓子とか、割とワラワラいて、役者を追っかけて観てたら面白そうだ。
2.動機が「いや、それはおかしい」
そもそも何で新幹線を大爆破せなならんかって言うと
①主人公の沖田(高倉健さん)が経営してた零細企業が倒産し&妻子と離婚してしょげちゃってる
②沖縄から集団就職で状況はしたものの、上手く世渡り出来無くて世間にあぶれちゃった青年を偶然沖田が拾って自分の会社で雇ったが、会社倒産してしまう。
でも、拾ってくれた恩を返そうと、自ら工事現場で働いて沖田を養っちゃう(う~ん、いい話?だ)。
が!
その働いてる工事現場で事故って働けなくなっちゃう=沖田を養えない・・・困る。
③過激派崩れの男(山本圭)と、沖田がしょぼくれてる時、たまたまラグビーの試合観戦で知り合っちゃう。
山本圭は2年以上どこぞの水商売女のヒモで生きてて、これ又世の中にあぶれた悲しい身分。
そんな山本圭と仲良くなった沖田と沖縄青年。
で、沖縄青年が工事現場で大怪我しちゃって沖田困ってた矢先、山本圭が沖縄青年雇ってた建設会社を過激派らしく強請って(?)金ふんだくって来ちゃう。
④まあそんなこんなで悶々とする沖田に、山本圭が「建設会社爆破すっか!」とトンデモナイ案を出す。
すると沖田が「そんな事よりより大金が手に入る新幹線爆破しようよ」と提案。
そうなると金も無いしどうも世間の負け組みたいな三人が「よし!やろう!」とそんな感じで新幹線大爆破する事にした。
・・・ちょっと待てや!
そもそも何故建設会社爆破する?
それでそれを却下したかと思いきや、どうして新幹線を爆破しようと考える!?
こんなんで乗客1500人大パニックに陥れるなんざ余りに身勝手だろうて!
3.イレギュラーあり過ぎ!
まあ「新幹線大爆破すっぞ!」と脅すのに成功しましたと。
「嘘だと思うなら北海道のSL大爆発させるから確認せいや」で、予定通り大爆破出来たと。
「爆弾解除したけりゃ500万ドル(当時1ドル300円なので15億円。現代の価値なら150億円ぐらい?)よこせ」っつー最大のミッションも、何だカンだあってクリア出来たと。
然しだ!
先ず
①最初に現金を受け渡す際、沖縄青年が川の断崖絶壁からロープ下ろして、金入ったトランク引っ張り上げるんだけど、その際、偶然柔道部の集団が沖縄青年の近くをランニングしてたと。
それを対岸の刑事が「そいつは新幹線爆破の犯人だから捕まえて~!」と大声で頼んじゃうの。
多勢に無勢でやべぇとばかり青年は川に飛び込んで、岸にあったバイクで逃走!
でもパトカーに追い詰められた挙げ句事故って死んじゃう。
②まあ事故るぐらいはまあアリでしょう。
問題はその後。
道歩いてた山本圭を偶然刑事が見つけて発砲迄して追い詰めるものの結局逃げおおせちゃう。
そんな事態なので、沖田は「もうやめっか」と弱気になるが、山本圭は「俺や青年や沖田が死んでも、このミッションは絶対成功させるんだ!」とハッパかける。
③偶然が多いが、中でも一番酷い偶然が、沖田が国鉄に「お金貰ったから約束果たす。喫茶店に爆弾解除方法書いた紙置いて来たからそこ行け」と指示だすんだが、何とその喫茶店が偶然に火事に合い、紙は消失しちゃう!
流石にこれ観た時「幾ら何でもこれは都合良すぎだろう!」と悶絶してしまった。
まあ紙が届けば、何とか爆弾解除出来て、沖田は大金持ってブラジルに行けた(パスポートは偽造)し・・・尚、何でブラジルなのかって理由は説明無い!
それだとまあ悪が勝つ!みたいなのでそこを何とか防ごうとはしたんだろうけど・・・ううむ・・・
4.警察側・国鉄側・新幹線乗客側の反応がフツー
「フツー」と書いたけど、様は「在り来たり」。
警察は必死こいて犯人を捜す(当然)、国鉄は何としても爆弾を解除しようとこれ又当然の対応、乗客側は乗客側で事件を知ったらパニック起こすと(これも当然)。
そんで以て乗客に妊婦がいて、妊婦が新幹線内で産まれるぅ!で、乗客のオジサンが新大阪で停車しなかったから(仕事で何としても降りたかったそうな)ハッキョウしたとか・・・まあその時代、アメリカでパニック映画全盛期だった事を踏まえて、新幹線内でパニックになる事を盛り込んだり(まーそんなもんです)と・・・今となっては当たり前な内容なのが気になった。
まあ警察も案外優秀(死んだ沖縄青年の指紋から沖田との繋がりを当てる等)だし、国鉄も速度落として時間稼いだり、爆弾発見後、新幹線並列走行させて爆弾除去の道具を新幹線に入れたりと相当頑張ってはいる。
まあ1で群像劇と書いたけど、犯人側、警察側、国鉄側、乗客側と4通りのドラマが展開するから、それぞれに見せ場がある。
それが結構リンクしてるから、そこはとてもイイと思った。
5.健さん・銃殺!
何だカンだと最終的に沖田が犯人とバレちゃう。
山本圭は沖田逃がす為ダイナマイトで自爆しちゃう。
もうどうしようも無いから金持ってブラジルに逃げようとするけど・・・ここで最大の見せ場がある。
「喫茶店に置いた紙が燃えちゃったから頼むから爆弾解除方法教えてくれ!そうせんともう直ぐ新幹線爆発して乗客1500人死ぬからお願い!」と、宇津井健がTVで犯人に訴える。
沖田は「誰も傷つけず殺さず金を戴く完全犯罪」をしようとしてたから、人情が動いて爆弾解除方法電話で教えちゃう。
でーも!
実は何とかして爆弾を解除出来たのです!
でも宇津井健のアピールは続いていた・・・即ち、沖田を逮捕する為に、未だ解除出来ていないと嘘ついて沖田を釣る!
それに対し宇津井健が「乗客の家族安心させたいからそんな事しないで」と頼むけど、警察側は「んな甘い事言ってたら逃げられる」とにべもない。
そしてクライマックスは、警察は沖田の分かれた妻子を空港の飛行機搭乗玄関に連れて来て、警察は妻子に沖田を確認させようとするシーン!
よせばいいのに沖田の子が沖田見つけて「あの人はお父さんじゃ無いよ!」と余計な事をしちゃう!
まあ額面通りに受け取れば父子の感動シーンなんだけど・・・
そしてとうとう追い詰められた沖田は、逃げようと抗うも銃殺され、映画は「完!」となる・・・
・・・観て結構楽しめたんだけど、当時は興行成績そんな良くなかったらしい。
でも海外では結構評価が高くて、長い目で見て興行的に成功した作品だと言う。
まあ確かにヨーロッパ映画みたいな内容だと思った。
まんまフランスとかドイツで似た企画やったらとても受けそうな感じがする。
じゃ何で日本じゃ受けなかった(映画マニアは評価高い)んだろう?
「邦画では珍しいパニック系アクションの製作と言う事もあり、業界からも注目を集めた。
然し、タイトルを理由として新聞への広告も拒否され、宣伝が十分に行き届く事が無かった。
元々ギターが弾けた山田以外は(リードギター:江藤博利、ドラム:新井康弘、ベース:今村良樹、初代リーダーで、サイドギター:山田隆夫)全く楽器が出来ず(!?)パート決めでは楽譜が読めなくても演奏出来そうなドラムパートの奪い合いになったと当時の芸能雑誌に紹介されていた。
1974年2月に『透明人間』(作詞・作曲:山田隆夫)でデビューして以来、通算でシングル20枚、アルバム9枚等を発表した。
「ずうとるび」と言う名前は本人達は、「ビートルズをひっくり返した」と言っている。
ずうとるびの代表的なヒット作品には、『みかん色の恋』『恋があぶない』『初恋の絵日記』等がある。
又、多数のバラエティ番組出演でも高い人気を持っていた。
歌番組では、4人並んで踊りながら歌う姿と、バンドとして演奏する姿の両方が見られた。
紅白歌合戦に1度(1975年)出場している。
『ずうとるび-』との併映は10代の映画ファンの興行への影響力が大きくなったのを見た岡田が、この年からメインの併映は「青春路線」で行くと発表していたからである。
第一級のサスペンス映画に仕上がりながら、任侠路線が色濃く残る東映のイメージも相俟って興行的には成功を収めたとは言えず、同年に東映が企画段階で頓挫した作品の穴埋めとして急遽製作・上映された『トラック野郎・御意見無用』の配給収入には遠く及ばなかった。
製作費を注ぎ込んだ『新幹線大爆破』がヒットせず、低予算で製作された『トラック野郎』が大ヒットした事も同作のシリーズ化を後押しする事となった。
トラック野郎は、企画から下準備、撮影を含めた製作期間は2か月、クランク・アップは封切り日の1週間前であった。
シリーズ化の予定は無く、単発作品としての公開だった。
所が、いざ蓋を開けてみると、オールスターキャストの大作『新幹線大爆破』(同年7月公開)の配給収入の2倍以上の約8億円を上げた事から、岡田社長は「正月映画はトラックでいけ」、「トラ(寅さん)喰う野郎やで」、「(2作目の)題名は爆走一番星や!」と即座にシリーズ化を決定した。
都心では先ず先ずの入りだったが、新幹線に縁の無い北海道や東北地方の客入りは悪く、当時の週刊誌誌上では「1975年3月の山陽新幹線の博多開業に合わせて公開しようとした便乗企画」等と書かれたが、山陽新幹線の通る西日本地域においても「サッパリだった」と言う。
一方、『キネマ旬報』の読者選出ではベストワンに選ばれる等、作品の評価そのものは非常に高かった為にマスメディアで様々な敗因の考察がなされ、東映営業部では「映画の内容がハイブロー(教養や学識のある人。知識人。又、知的で趣味が良く高級である様)過ぎてヤクザ映画とポルノが好みの東映ファンにソッポを向かれた」と分析。
脚本の小野竜之助は「ミニチュアを使った特撮を東映が大々的に宣伝し、トリックだとネタばらししたのが不味かった」「アイドル映画とくっつけないで、一本立てにしていたら結果は違った」等と話し、黒井和男も同様に「ミニチュアを派手に使って宣伝したポイントのズレが足を引っ張ったと思う」とのコメントを残している。
アメリカのパニック映画の国内進出を受けて立つと言う製作意図であったが、同時期公開された『タワーリング・インフェルノ』の拡大方式による攻勢により、本作も含めて東宝の『動脈列島』、松竹の『おれの行く道』等の日本映画は観客を持っていかれ、『タワーリング・インフェルノ』は当時史上最高の興行収入を記録した(62億円)。」
だと。
そうは言ってもこの手のパターンはヤン・デ・ボン監督の『スピード』とか、『列車戦隊トッキュウジャー』でもオマージュ(尊敬を込めた作品)されてるし。当時からマニアの評価も高い&海外の評価ももっと高かったりと、中々面白い。
ただな~
全体的に評価すれば「大袈裟なパニック映画」「俳優の無駄遣い」&「ヨーロッパ映画みたい」「俳優沢山いてオールスター映画好きには堪らない」の低評価&高評価相反する感じがします。
いや、俳優の皆様一生懸命頑張って演技してるし、脚本もアラはあるけど全体的に良く纏まって面白いし、当時の特撮で物凄く頑張ってるし・・・ん?
結構褒めてますね・・・じゃあ何が悪いのか!?
「国鉄に実物の新幹線の撮影協力を交渉した所、安全を謳い文句にしていた国鉄は刺激的な映画のタイトルに難色を示し、<『新幹線大爆破』と言う映画のタイトルでは新幹線のイメージが悪くなるので、『新幹線危機一髪』と言うタイトルへ変えるなら撮影に協力しても良い>とタイトル変更を打診するが、東映は拒否!
1974年12月、国鉄が<現在、新幹線に爆弾を仕掛けたと言う電話は週に1本の割合でかかって来て、その度に悪戯(いたずら)電話かも知れないが、必ず最寄の駅に停車させて検査する様な状態である。この様な映画は、更に類似の犯罪を惹起する恐れがあるから製作を中止されたい>と本作の企画に断固反対の姿勢を打ち出した。
岡田茂は「新幹線大爆破」で譲らず、1975年2月初めに国鉄から80%協力は得られないと言う線が出て、同年4月に撮影協力を断られた。
『週刊朝日』(1975年4月18日号)に<九割がた製作中止になりそう>と報道されるが、現場の士気はかえって上がった。
1年以上かけた企画を潰す事は出来ず、特撮に切り替えた。
裏ルートで取材を行い、実物大の客車セットや模型を作り、撮影を進める。
ロケーション撮影が不可能な為、岡田は<隠し撮りとミニチュア撮影の合成>と指示。
急ピッチで撮影に入るが、2か月程遅れた。
当時のニュース映像や資料写真を参考にしたり、色々な手を使って本物そっくりのセットを作りあげた。
この為、国鉄からは3年間出入り禁止となった。
特撮部分に総額6000万円をかけている。
完成が封切の2日前迄ずれ込んだ為に試写会の開催も無かった」
これがいけなかったのかなあ・・・
然し結構面白かった。
良かったらご覧下さい。
因みに
竜雷太:菊池(鉄道公安官)、、多岐川裕美:スカンジナビア航空係員、志穂美悦子:国鉄本社電話交換係、十勝花子:乗客、阪脩:テレビアナウンサー、岩城滉一:東郷あきら(ロックミュージシャン)、小林稔侍:森本運転助士(ひかり109号)、北大路欣也:空港で古賀を張り込む刑事
等がさり気なく出てます。